公爵様の偏愛〜婚約破棄を目指して記憶喪失のふりをした私を年下公爵様は逃がさない〜



「……それにしても!一体ルーカスはどうしちゃったのよ。以前の彼と違いすぎて、本当に頭がおかしくなりそうよ」

「うーん、今までは素直になれなかっただけでは? これをきっかけに、お嬢様との関係を新しく築こうとされているとか!」

「そういう物語読んだことあります!」なんて、はしゃぐマリアに思わずため息がでた。このおバカは一体何をいっているのだろうか。

「ルーカスが素直になれない? そんなのあり得ないわ。彼の態度は昔から変わらないもの。それこそ出会ったときから、ずっとね」

「あら、そうなのですか? てっきり昔はお嬢様に懐いていたのかと…」

 マリアがあまりにもおかしなことをいうので、思わず声を出して笑ってしまった。

 ルーカスが私に懐いてた?
 まさか、ありえない。

「ルーカスはね、婚約する前から私のことが嫌いだったの。それこそ口も聞きたくないぐらいにね……きっと今は、記憶のない私がいい玩具だから暇つぶしに遊んでいるだけよ」

 そう言った瞬間、なぜか胸がズキリと痛む気がした。マリアが慰めるように何かを言っていたが、私の耳には届かなかった。


「……嫌いじゃなかったら、あんな酷いこといったりしないもの」