「わ、わたし、まだ仕事が終わってないので。」
わたしは話を逸らす為にそう言って、残りの仕事を再開させた。
師道社長は「あぁ、仕事の邪魔をして悪かったね。じゃあ、俺はここで待たせてもらうよ。」と言い、デスクの椅子に座り直すと、足を組んでわたしの方を向いた。
「あのぉ、、、見られてると、やりづらいんですけど。」
「気にしないで?俺は、妃都が仕事をしてる姿を見るのが好きなんだ。」
気にしないでって、、、
そんなに見つめられたら、気になるわ。
結局、師道社長はずっとわたしを隣で見つめていて、わたしは気になりつつも仕事を続け、通常であれば30分で終わるはずだった業務に1時間も掛けてしまった。
わたしの仕事が終わると、師道社長は香川さんに連絡して迎えに来てもらい、帰宅したのは19時半。
わたしは仕事着から部屋着に着替え、エプロンをつけるとキッチンへと向かい、冷蔵庫を開けた。
何作ろうかなぁ。
残業しちゃったから、簡単に出来るものでいいよね。
そう思いながら、冷蔵庫の中の食材と相談していると、師道社長がやって来て「今日は何を作るの?」と、後ろから抱き締めてきた。
「ちょっ!し、師道社長!離れてください。」
「やだ。」
「そんなにくっつかれたら、料理が出来ません。」
「嫉妬、、、」
「えっ?」
「高坂さんに嫉妬したから、、、今日は離れないよ。」
師道社長はそう言って、わたしから離れてくれず、わたしは気にしないフリをしながら、料理を進めていった。



