愛は花あられ


「今日は少しだけ残って仕事してから帰るつもりなの。」

わたしはパソコンの画面の方に向き直りそう言うと、誠太はわたしの隣のデスクに腰を掛けた。

「それなら、終わるまで待ってるから、一緒に帰らない?」

誠太はそう言って、デスクに頬杖をついた。

「お断り。帰りは香川さんが迎えに来てくれるから。」
「さすが社長夫人。送り迎えつきですか。」
「仕事が終わったなら、さっさと帰れば?」

わたしがそう言うと、横から誠太の視線が突き刺さってくるのを感じた。

しかし、わたしは気付かないフリをしてパソコンに向かい続けた。

「なぁ、師道社長とは上手くいってんの?」
「そんなプライベートなこと聞いてきて、何なの?」
「いや、、、あんな容姿端麗で有名な若社長と結婚したわりに、幸せそうに見えないから。」

わたしは誠太の言葉に反応せず、黙ったままでいた。

すると誠太は、わたしの腕を掴んだ。

「なぁ、俺たちやり直さないか?」

、、、はっ?

この男、、、何言ってるの?
別れた原因つくったのは、、、そっちのくせに。

「俺、まだ、」

誠太がそう言い掛けた瞬間、「妃都。」とわたしを呼ぶ声が聞こえた。

その声にフロアの入口の方に視線を移すと、そこには腕を組みながら入口の枠に寄り掛かる師道社長の姿があった。