きみはあたしのライラック

「すずが嫌なら無理にとは言わないけど
どうかな?」

「…」



佐奈の言葉に、あたしは少し考える。


冬には学校に行けるようにと
夢の中で、ひもろぎさんに協力してもらって
特訓を続けていた。


あの場所に対する恐怖心は
教室の中に入ることができた
あの日から、もう完全になくなってはいたけど


一度は見て見ぬフリをしたこと
そのまま、逃げ出してしまったこと
なかったことにしてしまいたかったことを


時間を巻き戻して
やり直すことは出来なくても


自分の中で、あった出来事として
きちんと全部、受け止めて進みたいと思った。


それがあっての今のあたしだから。



恐怖心は感じなかったけど
目の前に再現される度に、痛みと後悔の気持ちが押し寄せてきて、苦しくなることも多かった。

同じくらいに、悲しみや怒りを感じたことも。


それでも、今日まで、それを続けてきた。


記憶も、感情も、たくさん時間をかけて
全部、受け入れてきた。


もう、過去の出来事に怯えて
ただ泣くことしかできなかった
あの頃のあたしじゃない。


受け入れる強さも、受け止める強さも
今のあたしは、ちゃんと持ってる。



……だから、きっと、もう大丈夫。



「…行く。」



真剣な声で返したあたしに
佐奈は優しく笑って頷いた。