きみはあたしのライラック

どうして、そう思ったのか
何が原因で、そんな事を思い始めたのか

明言しなくても
すぐに理解した様子のひもろぎさんは
困り笑いを浮かべて、優しくあたしに問いかける。



「あの日から
ずっと、そんな事を考えていたの?」



無言で、小さく頷けば
ひもろぎさんは、あたしの涙を指先で拭いながら
柔らかく微笑む。



「ありがとう。
泣かせて、悩ませてごめんね。」

「……っ、あ、あたしが、勝手に……」



あたしが、勝手に感情移入して
勝手に感情を爆発させたたけだ。


ひもろぎさんのせいじゃない。


申し訳なさそうに笑うひもろぎさんに
慌てて弁明しようとしたけど
それを遮って、ひもろぎさんはあたしに言う。



「でも、僕の事を、すずが
そんな風に抱え込まなくていいんだよ。」


「苦しくない、寂しくないって答えたら
嘘になるけど…」


「僕なりに、自分の身に起きたことは
時間をかけて、受け入れてきたつもりだし」


「そういう感情とも
折り合いをつけて生きている。」


「それに、前に話した通り
僕のそばには、みなかみさまもいる。」


「僕は、孤独(ひとり)ではないんだから。」




『孤独(ひとり)じゃなければ、大丈夫』


前にも聞いた、それは
きっと、ひもろぎさんの本心なんだろう。



「……で、も……」



だけど、あたしは、ひもろぎさんの中に
消せない痛みと寂しさが残っている事が

残ることが


どうしても嫌だ。