きみはあたしのライラック

「…」



葛藤とためらいの間を置いた後
あたしは、固く結んでいた唇を開いた。



「………ひ、ひもろぎさんが…」

「うん。」

「…………寂しいのが……嫌なの…」



消えてしまいそうな声で口にした
その言葉を、きちんと耳に拾い上げた
ひもろぎさんは、ほんの少し、目を開いた。



「……ひもろぎさんが
……痛い、のは、嫌…なの…」



言葉にしたら、さらに悲しくなって
あたしの目からこぼれる涙は勢いを増す。



「…ひも…ろぎさ、んが……苦し、のが…嫌……」



声が震えて、ところどころ
言葉が喉に引っ掛かって、うまく話せない。



「……………嫌、なの。」



それでも

わがままを言う子供のように
ひたすら『嫌』だけは繰り返した。





この人の心が、寂しいのが、苦しいのが


痛むことが


それを見るのが


なによりも、嫌で……辛い。



この人を癒したいのに、癒しきれない。


それどころか、この先の未来


あたしの存在が
この人を、この人の心を傷付けるかもしれない。



それが……嫌で嫌でたまらなくて




悲しくて




苦しい。