きみはあたしのライラック

どうやら、今
その答えを明かすつもりはないらしい。

だけど、ひもろぎさんが示唆(しさ)するように
なんとなく、そう遠くない日に
その答えが解る気がしたあたしは
黙って、その言葉を受け入れた。



「……それより、すず。
この豪華なのはなに…?」



ちゃぶ台の上にある『それ』に気付いた
ひもろぎさんが、聞いてくる。

ひもろぎさんの目には
かなり魅力的に映ったんだろう。

その表情は高揚感で満ちていて
眠気も一気に吹き飛んだ様子。



「今日はね、アフタヌーンティー風にしてみたの。」



ひもろぎさんの視線の先にあるのは
3段のアフタヌーンティースタンドだ。


下段には、生クリームと果物を
たくさん挟んだフルーツサンドイッチ。

中段には、外はサクサク、中はしっとり食感に仕上げたスコーン。

上段には、1口サイズのプチケーキ。
イチゴショートにチョコレート、ミルフィーユ等、色んな味を用意した。



気合いを入れて作ったそれは
自分でも大満足の出来で、かなりの自信作。



「ひもろぎさんへのお礼に。
ちょっと頑張ってみた。」

「?お礼されるようなことした?」



すっかり、お菓子に目が釘付けになっていた
ひもろぎさんは、あたしの言葉に不思議そうな顔を向けた。



「佐奈の事、ありがとう。」

「…僕、本当に大したことはしてないんだよ?」

「ううん。ありがとう。」



佐奈が元気になって戻ってきてくれた。
それに、ひもろぎさんが一役買ってくれた。

詳しいことは分からないけど
あたしにとっては、それで充分。



「……これ、本当に食べていいの?」

「ひもろぎさんのために作ったものだから。」



思いがけないご褒美に
少し躊躇するような声を出しつつも

食べたい欲求を抑えることは出来ないようで
ひもろぎさんは、そわそわしながら
窺うように、あたしを見る。


頷いて、笑顔を返せば
ひもろぎさんの表情は一気に喜びに染まる。



「いただきます!」

「…どう?」

「おいしいっ」

「良かった。たくさん食べてね。」

「うん!」