きみはあたしのライラック

「ねぇ、すず。」

「うん?」

「すずは、他にもお菓子作れたりする?」

「え?…えっと、うん。作るの、好きだから。」



小さな頃から、教育熱心な両親に厳しく育てられた。

勉強、運動、料理、礼儀作法、一般教養…
とにかく、たくさん叩き込まれた。

その中で、自分が好んで熱心に学んでいたのが、料理やお菓子作りだ。

だから、レパートリーには自信があるし
数をこなしてきた分、腕前も悪くない。

得意分野と言っても過言じゃないと思う。



頷けば、ひもろぎさんは嬉しそうに笑って
あたしに提案する。



「じゃあさ
これからも、僕にお菓子を作ってよ。」

「え?」

「毎日じゃなくてもいいから。
すずの作ったお菓子、食べさせて。」

「…」

「嫌かな?」

「……ううん。嫌じゃない。」



そんな風に、求めてもらえたことに驚いて
黙り込んでしまっただけで。



「楽しみにしてるね。」

「…うん。」



変わらず、嬉しそうに笑うひもろぎさんに
あたしも笑って頷いた。



夢の中、不思議な男の子との
『おかし』な生活は、ここから始まった。