きみはあたしのライラック

そう語るひもろぎさんは
終始、穏やかな笑顔を浮かべていて


その笑顔が更にあたしの胸を痛くする。



「…」

「……すず?」

「……ぎゅって、したくなった。」



胸に押し寄せてくる切なさに
心が張り裂けそうになって
あたしは、ひもろぎさんを抱き締める。



「あはは。変なすず。」



腕の中で、おかしそうに笑いながらも



「……でも、いいね。
誰かに……人に、触れて貰えるのって。」



その温もりに安堵するように
表情を緩めて、ひもろぎさんは目を閉じる。



「………抱き締めて貰うのなんて、何百年ぶりかな。」



懐かしむような声音に
薄く開いた瞳に滲む、切なさに、哀愁に




この人が、歩んできた




途方のない年月に




重ねた出会いと別れに




心の奥に抱えた想いに





あたしの胸は、また苦しくなって




こぼれるのを堪えた涙が、再び、瞳に滲んだ。