きみはあたしのライラック

「死のうとしたこともあった。
でも、死ねなかった。」



それは、死への恐怖心からではなく



「すぐに、身体の傷が塞がっちゃうんだ。
首を締めても、毒を呷(あお)っても
どんな手段を使っても、だめだった。」



内に宿る不思議な力の影響で
『自死』は出来ない身体になっていた。



「僕の内側にある『これ』は
寿命以外の死を認めてはくれなかった。」



不死ではない。
けれど、そう表現しても遜色(そんしょく)ない程の
治癒力を、ひもろぎさんは得ていた。



「…」



何度も何度も、自分を傷付け、痛め付ける。

それでも、死ねず、絶望する。

そんな、ひもろぎさんの姿が頭に浮かんで…



「……ごめん。余計な事を話したね。」



目の縁いっぱいに涙を溜め
小さく肩を震わせるあたしを見て

それまで、ずっと笑っていたひもろぎさんは
そこで初めて表情を曇らせた。


失言だったと謝罪するひもろぎさんに
声を出すことができないあたしは
代わりに、勢い良く首を横に振った。