きみはあたしのライラック

……。




ひとしきり話終えたひもろぎさんに
あたしは、静かに問いかけた。



「…………生きるのを
終わらせたいって、思わなかった?」



自分が思っていた以上に、壮絶で過酷な話。


生まれ落ちた時代の背景もそうだし
幼いひもろぎさんが背負った役割(もの)も
その先に待ち受けていたものも、その後の人生も


ただの『不運』や『災難』で片付けるには
あまりにも重すぎる。


自分の身に降りかかったそれを
何の抵抗もなく、受け入れ
少しも歪まずに生きられる人なんて
あたしには想像出来なかった。


だから


今、笑顔を浮かべているひもろぎさんにも
投げ出したくなった時があったんじゃないかって。


聞いたところで何も出来ないのに
ひもろぎさんの『過去』を『背負ったもの』を
変えることなんて、なかったことにするなんて
あたしには出来ないのに


それでも、聞かずにはいられなかった。



「そうだね。何度も思った。」



ひもろぎさんは、変わらず笑顔で頷いた。