きみはあたしのライラック

「これで問題ないでしょ?」



わくわく。きらきら。


呆気に取られるあたしの隣で
期待に満ちた眼差しを向けてくるひもろぎさん。

あたしは、そんなひもろぎさんを
戸惑いながら見つめた。



「……ひもろぎさんは、夢の神様なの?」



まるで、勝手知ったる我が家のような振る舞いで、こんな風に、夢の中を自由自在に操れる。



『「今」は僕がいるから、大丈夫だよ。』



あの時の言葉と言い、今のこの所業といい
もしかしたら、この子はこの場所の主なのかもしれない。



「え?うーん…
神様とは違うけど、色々自由にはできるね。
僕が知ってるもの、見てきたものなら、なんでも出せるよ。」

「………そうなんだ。」

「僕は、それを食べたことがないから
「味」や「見た目」が分からない。
だから、出すことが出来ないんだ。
だから、すず、作って。」



よっぽど、フローズンヨーグルトに
興味をそそられたみたいで、ひもろぎさんは必死だ。


お願い!と、両手を合わせて
あたしに懇願する。



………いきなり
空間が変わったことには驚いたけど

よくよく考えれば

ひもろぎさんみたいに
自分で自由自在に操る事は出来なくても

夢の中は、基本的になんでもアリな世界だ。

現実では出来ないこと、行けない場所
ありえないような状況も
時として、違和感なく受け入れ、体験できる。



「……うん。いいよ。」

「!ありがとう!」



冷静さを取り戻したあたしは
そんなひもろぎさんに頷いて、笑顔を返した。