きみはあたしのライラック

ひもろぎさんの言う通り
中身はひもろぎさんのまま、距離感も同じ。


人懐っこいのも、優しいのも
ひもろぎさんの良いところだ。


だけど、あの姿で
あの距離感は心臓に悪すぎる。


子供の姿とあの姿じゃ、わけが違う。


ひもろぎさんに他意はないし
あたしが気にしなければいいだけなんだけど…


それが、なかなか難しい。




「……じゃあ
すずに免疫が出来ればいいんだね?」

「え?」

「これからの事を考えたら、どんな相手でも
大丈夫なようにしていた方がいいだろうし…」

「ひ、ひもろぎさん…?」



……嫌な予感がして

近づいてきたひもろぎさんから
逃げるように後ずさるも

屈んだひもろぎさんに、ぱしっと手首を掴まれる。



「………あ、あの、ひもろぎさ…」

「緊張しなくなるまで、頑張ろうか。すず。」

「~~~っ」



顔をあげれば
そこにいたのは、幼いひもろぎさんではなく

暴力的な美しさを携(たずさ)える
同年代のひもろぎさん。


至近距離で、にっと唇の端をつり上げて
蠱惑(こわく)的に笑うその人に
あたしは真っ赤になりながら、声なき悲鳴を上げた。