きみはあたしのライラック

――……




「………あの、ね。ひもろぎさん。」

「ん?」

「も、もう十分だから
そろそろ、子供の姿に戻らない?」



あたしとひもろぎさん以外、誰もいない公園。


遊具はブランコとすべり台のみの
ほんとに小さな公園。


あたしが幼い頃、よく遊んでいた
お気に入りの公園を再現したものだ。


ブランコに腰かけていたあたしは
隣で、同じようにブランコに腰かけ
エクレアをくわえていたひもろぎさんに
おずおずと申し出る。



「ほうひひの?」

「うん。」



頷けば、あたしが瞬きした一瞬の間に
ひもろぎさんは、もとの姿に戻っていて。

景色も、いつもの青空が広がっている。



「…」



隣で、座布団の上に座って
もぐもぐと口に詰め込んだエクレアを味わう
ひもろぎさん。


幼いその姿に、ほっとする。





あれから、時折
ひもろぎさんは同年代の姿で
あたしを迎え入れてくれるようになった。


あたしが望んだ事を
現実では無理でも、夢の中でならと
叶えてくれようとしてくれた。


それは、とても嬉しいことではあるんだけど…


あの姿のひもろぎさんと一緒にいると
変に緊張してしまって


会話も、呼吸もうまくできなくなる。