きみはあたしのライラック

「…」



愛でるように、あたしに視線を落とす
ひもろぎさん。


頬に触れる手は、いつもよりも大きく
細いけど、しっかりとしていて

その感触に、あたしはうろたえて
赤い顔のまま固まる。


普段の幼い姿なら、「ありがとう。」と
優しく笑い返せるのに


少し、見た目が変わるだけで
こんなにも、動揺してしまう。




「すずは、もう少し
自分に自信持った方がいいよ。」

「……………難しいよ。」

「じゃあ、すずが自信を持てるようになるまで
いくらだって、僕が言うよ。」



「すずは可愛いって。」




……。




…………深い意味なんてないって、分かってるのに。



その優しい眼差しと
嘘偽りのないまっすぐな言葉は
あたしの心を激しく揺らす。



「………ひもろぎさんの女たらし。」

「?何か言った?」

「…なんでもない。」



不思議そうに首を傾げるひもろぎさんから
あたしは、そっと目を逸らす。


どきどきとうるさい心臓を手で押さえながら
あたしは、ひもろぎさんに気づかれないように
小さく、ため息をついた。


その後も、しばらく
顔の熱と、胸の高鳴りは収まらなかった。