きみはあたしのライラック

……ずっと、行く気にはなれなかったけど
未来に対して、前向きに考えられるようになったから。



ひもろぎさん達のおかげで。



「♪」



今日のお菓子もお気に召したようで
上機嫌にチョコレートタルトを堪能している
ひもろぎさん。


そんな、ひもろぎさんを眺めながら、あたしは思う。



「……学校に、ひもろぎさんが
いてくれたら良かったな。」



休み時間やお昼に、こんな風に
作ったお菓子を食べながら、他愛ない話をしたり

放課後、一緒に美味しいお菓子の店に寄り道したり

どこかに遊びに行ったり


もし、ひもろぎさんが同い年で
あの学校に通っていて、友達だったなら
楽しい学校生活を送れていたかもしれない。



無意識に口を突いて出た言葉に
ひもろぎさんは少し目を瞬かせてる。


あたしは、そんなひもろぎさんに
「なんてね。」と、笑いかける。



「……やってみる?」

「え?」



あごに手を置いて、なにやら思案していた
ひもろぎさんは、首を傾げながら、あたしを見て


それから


ぱちんと指を鳴らす。



「!」



空間の景色が変わる。


季節は少し逆行して
春の優しい日差しが差し込む教室。


開けっぱなしの窓から、侵入してきた
柔らかな風が、ふわりとカーテンを揺らす。


窓際の席に座っていたあたしは
目の前で、ひらひらと舞う
そのカーテンの向こうに立っていた
相手を見て、目を見張る。