きみはあたしのライラック

――……



多分、あたしが夢の中で
あの『トラウマ』を乗り越える事が出来たのは


『進む』事が出来たのは




「すず。これは、どうやって解けばいいの?」

「これはね。この公式を使って…」

「ああ、なるほど…。ありがとう。」




隣で一生懸命、参考書とにらめっこしている
この子の存在も大きく関係していたんだと思う。



この子と……佐奈とは、あの日以来
ほとんど毎日、一緒に過ごすようになった。


佐奈のバイトが終わった後
あたしの部屋で、勉強会をするのが
ここ最近のルーティンになっている。


約束した植物や花のこと以外にも
佐奈が興味を持った高校の科目教科や料理など
色んなことを、教えている。


最初は、お互い、ぎこちない感は否めなかったけど
この勉強会を通して、佐奈とは大分打ち解けた。


自分の事、過去の事、抱えていたもの。


今まで、他人(ひと)に言えなかったことも
自分と『近い』佐奈には打ち明けられた。




おばあちゃんやひもろぎさん以外で初めて
『ありのまま』でも受け入れてくれる相手に
出会えたことは、佐奈の存在は、あたしにとって、希望になった。



そのままのあたしで大丈夫なんだと
自分自身でようやく納得できたからこそ
あたしはきっと、過去のしがらみから抜け出せた。


『あたし』を否定する
あの記憶に打ち勝つことが出来た。