きみはあたしのライラック

それは、時間の経過と共に訪れる
自分の気持ちの変化だったり

自分がそれまで積み重ねた努力の結果だったり


『行動する』か『行動しない』か
最初に選んだ選択肢で変わるけど…


どちらを選んだとしても、早いか遅いかだけで
最終的に、行き着く先は同じになる。



「辛い記憶も深い傷も
時間をかければ癒えていくものさ。」


「完全には癒せなくても、消せなくても。」


「それでも、乗り越える力を与えてくれる。」



ひもろぎさんは
ぼんやり教室を眺めていたあたしに手を伸ばす。



「頑張ったね。」

「…」



偉い偉いと
何度もあたしの頭を撫でる、ひもろぎさん。



……おばあちゃんも
ひもろぎさんも、解ってたんだ。


どんな困難だったとしても
どんなにつまずいたとしても
どれだけ時間がかかったとしても
あたしが、それを乗り越えるって。


そういう風にできているんだって。


だから、いつも『大丈夫』と言ってくれていた。



「…うん。」



悲しいわけでもないのに
何だか目頭が熱くなって、瞳が潤む。


ひもろぎさんは
変わらず、優しい表情を浮かべながら
あたしの頭を撫で続ける。





どんな選択肢を選んだとしても、行き着く先は『前』。





ひとつ、過去を乗り越えた今日
あたしは、それを知った。