きみはあたしのライラック

「やぁ。」

「………こ、こんばんは…」

「こんばんは。おかし食べる?」



どこまでも続く青空を写したような空間に
今では、あまり見かけなくなった丸いちゃぶ台。
ふかふかの座布団。


その座布団に腰をおろして
もぐもぐと和菓子を口に頬張って
くつろいでいたひもろぎさんは
あたしの姿を見つけるなり、気さくに声をかけてくれた。



「……ありがとうございます。」

「座らないの?」

「………お邪魔します。」

「どーぞ。今、お茶入れるから。」



言うや否や、いつの間にか
ちゃぶ台の上に現れた急須で
お茶を入れ始める、ひもろぎさん。



「…」



貰ったお菓子を、おずおずと口に入れながら
あたしは、じっと
観察するようにひもろぎさんを見つめた。





あの日以来、嫌な夢を視なくなった。


代わりに、あたしの夢にはこの男の子
ひもろぎさんが現れるようになった。


現れると言うか…
気付くと、あたしがひもろぎさんのいる場所に来てる。


毎回、こうして
夢の中で、くつろいでいる彼を見つけて
なんとなく、その傍に行く。


ひもろぎさんは、あたしが突然現れても
驚きも、嫌がりもしなかった。

ただ、普通にあいさつをしてくれて
こんな風に、あたしをもてなしてくれる。



「明日は何を食べようかなぁ。」

「…いつも、何か食べてるけど
甘いものとか好きなの?」

「うん。おいしいからね。」



幸せそうに笑いながら
次々お菓子を頬張るひもろぎさんは
どうやら、かなりの甘党のようで

カステラとか、おまんじゅうとか、わたあめとか
甘いお菓子をよく食べてる。