きみはあたしのライラック

その言葉にほっとしつつ
お見舞いに来てくれていた様子のあの子に
あたしはお礼を言う。



「……来てくれて、ありがとうございます。
人の気配があって…安心しました。」

「…飲み物とか持ってきますか?
何か食べられそうなら、軽いもの用意します。
熱があるなら、熱冷ましシートとか…」

「いいえ。…傍にいてくれるだけで充分です。」



甲斐甲斐しく、あたしの看病をしてくれようとするあの子に、あたしは首を横に振る。



……ああ、いつも、こんな風に普通に話せたらいいのに…



夢の中だからなのか
不安も、恐怖も、緊張も全然感じない。

普通に接することが出来る。



「…」



……夢の中なら

来てくれて、ありがとうって
誰かが、傍にいてくれて安心したって

普段は言えないような言葉を
抱えていた本音を、弱さを、感謝を
さらけ出せる、伝えることができるのに。



……おばあちゃんや
ひもろぎさん以外にも心を開けるのに―…



「…」



そこで、はた、とあたしは気づく。



…………あれ?………ちょっと、待って……



そうだ。ひもろぎさん。

夢の中なら、ひもろぎさんがいるはず。


ひもろぎさんは寝込んでるあたしの傍を
離れるような人じゃないし…