きみはあたしのライラック

「昨日の続き、聞かせてくれる?」

「もちろんさ。」



ひもろぎさんは、にこっと笑って
持っていた本に綴られた文章を読み上げていく。


ひもろぎさんの口からこぼれる
穏やかで優しい声は、まるで、鎮静剤のようだ。


ざわざわと落ち着かない気持ちを
一瞬で、なだめてしまう。



……安心する。



身体が弱っていると
どうしても、心も弱くなってしまうから。


こうして、隣にいてくれる
優しく寄り添ってくれる、ひもろぎさんの存在に
あたしは、深く安堵していた。


おばあちゃんを困らせたくなかったから
ひとりでも大丈夫って、強がったけど
本当は、心細くて仕方なかったから。



「そして、村人は言いました。あなたの―…」



……夢から覚めたら、この優しい声は消えてしまう。

隣に、声の主である、ひもろぎさんはいない。



「…」



……夢の中のように、現実でも
こんな風に誰かが、傍にいてくれたらいいのに。



なんて



そっと、目を閉じて、そんな事を思っていたら…