きみはあたしのライラック

………怖い。



殴られるだろうか、叩かれるだろうかと
恐怖に震える。


あどけない顔つきの、かわいらしい男の子。
そんな、自分よりも小さな子供相手に
怯える自分が情けない。


でも、怖くてたまらない。


だって、ここは、あたしの夢の中。
相手が、いつ豹変するかも分からない。




「何にそんなに怯えるの?」




だけど


降ってくる声は、変わらず穏やかだった。




「…」

「『今』は、僕がいるから大丈夫だよ。」




……なにが大丈夫なのかと、
思わず、跳ね返したくなった。

だけど、不意に頭を撫でられて
あたしは目を丸くした。



「今日は
きみが嫌だと思う夢にはならないから、安心して。」



断言しながら
その子は、あたしの頭を撫で続ける。




……。



………この子が、あたしに触れる度に
恐怖が静まり、身体の震えも小さくなる。



そっと、顔を上げれば
その子は、優しい笑顔をあたしに向けて
問いかけた。





「名前、なんて言うの?」

「………………すず。」

「僕は、ひもろぎ。よろしくね。」