きみはあたしのライラック

――……




「―…それでね。嬉しくて、あたしも花を贈ったの。」

「うん。」



今日の出来事を話せば
先日報告した時と同じように、ひもろぎさんは、優しい笑顔をたたえながら、あたしの話を聞いてくれる。



「プランターで育ててたものなんだけど
花言葉が、あの子にぴったりだと思って。」



嬉しい気持ちを伝えたいけど、お礼のお礼で
あんまり、しっかりしたものを返したら
かえって、気を遣わせてしまうかもしれないから

ベランダを彩ってくれている、あの小さな花を贈ることにした。



「どんな花言葉?」

「『困難に打ち勝つ』って意味があるの。」



慣れない仕事に悪戦苦闘しながらも
あの子は毎日、頑張っていた。

今はまだ、失敗することもあるみたいだけど…

その努力が確実に実を結んでいることを
覗き見常習犯のあたしは知ってる。



「本当にささやかなものだけど…
気持ちが伝わってくれたら…嬉しい。」

「そうだね。きっと伝わるさ。」



こぼした言葉に
優しい声を返してくれるひもろぎさん。

そんな、ひもろぎさんに笑顔を向ける。



「……それでね。ひもろぎさん。」

「うん?」

「お願いがあって…」

「?」



あたしは表情と居ずまいを正して、話を切り出した。