きみはあたしのライラック

「………………頑張って、みる……」



小さく声を返せば
ひもろぎさんは笑みを深めて立ち上がり
あたしの隣にやってくると



「すず。こっち向いて。」



ちょいちょいと
指先で自分の方に体を向けるように指示をする。



「?」



言われるがまま
ひもろぎさんの方へ体を向ければ

ひもろぎさんは、あたしの前髪を掻き分けて
そのまま、額にキスを落とす。


肌に触れた唇の感触に、あたしは目を瞬かせる。



「………ひ、ひもろぎさん…?」

「現実世界では、あまり長くは持たないけど
僕の加護。」



呆気に取られるあたしに、ひもろぎさんは変わらず、柔らかい笑顔を浮かべて言う。



「すずが、少しでも前に進めるように。」



背中を押す優しい言葉に、行動に
驚きに染まっていた顔は、徐々に緩んで



「……ありがとう。」



胸の中に、じんわりと
あたたかさが広がるのを感じながら
あたしは、ひもろぎさんに笑顔を返した。