きみはあたしのライラック

口許を覆っていた手を離して
うつむきがちに、ぽそりと声を返す。



「……おばあちゃんと、ひもろぎさん以外とは、ずっと話してないから…」

「うん。」

「……絶対、テンパる。」

「別にいいじゃないか。」

「…挙動不審になるかも。」

「なってもいいじゃないか。」



ひもろぎさんは、あたしが不安を口に出す度に
それでもいいじゃないかと繰り返す。



「それが、今のきみなら
そのまま、ぶつかればいいさ。」

「…」

「それで、もし拒まれたとしても
すずは一歩、前に進んだことになる。」

「……前に……」



……確かに、引きこもり状態の
今のあたしにとって、『外』の…
『誰か』との交流は大きな一歩になる。


拒絶されたとしても
ちゃんと挑んだのなら、自分から動けたのなら
きっと、傷付いたとしても、自信に繋がる。


今いる場所から、そこから一歩進めたなら
きっと、それは意味のある事だと


ひもろぎさんから
たくさん言葉を貰った、今のあたしは思う。


……。



そろりと顔を上げ
窺うようにひもろぎさんを見つめる。


ひもろぎさんはあたしの背中を押すかのように
優しい笑顔を浮かべてる。