きみはあたしのライラック

翌日。



……そういえば
今日から来てくれるバイトの人


あたしと同い年って
おばあちゃんは言ってたけど…


……学校は?



朝食の片付けをしながら
ふと、頭に引っ掛かった疑問。



普通に、平日の昼間から
バイトに入ってくれるって、ありがたいけど
学校は大丈夫なのかな?



机の上をフキンで拭きながら
あたしは、茶の間の壁にかけられたカレンダーを確認する。



まだ、夏休みには早いし…
それか、定時制とか通信制に通ってるとか?



「………あたしと同じで
学校、行ってないとか…?」



…。



………どんな子なんだろう。





――……






興味を惹かれたあたしは、数日後
こっそり、お店を覗いてみた。


自宅とお店を繋ぐ、その扉の隙間から
そっと、店内に視線を巡らせれば


おばあちゃんの話を
真剣な顔で聞いている女の子の姿を見つける。



……小さくて、華奢な女の子だ。



ちゃんと食べているのか、思わず心配になってしまうくらい、線が細くて、色白で


少し力を入れて抱き締めたら
折れてしまいそうなくらい、儚げな、その姿に



………だ、大丈夫かな…



花屋が、意外と体力仕事な事を知っている
あたしは、はらはらしてしまう。



だけど



おばあちゃんの言葉に、しっかり頷いて
作業をする、その子からは…


その子の目からは
意思の強さのようなものを感じて



…。



目の前の事に、ひたむきに、一生懸命に努力する。


そんな姿に、あたしの目は釘付けになって


しばらくそのまま
扉の隙間から、その子を眺めていた。