きみはあたしのライラック

「…」



小さな頃から、ここに入り浸って
おばあちゃんの仕事を見てきたから
一連の流れは把握してる。

おばあちゃんから教わったから
知識や技術も身に付けてる。


今こそ、常日頃から
あたしを守って、支えてくれている
おばあちゃんに、恩返しをする時なのに



………まだ、『人』が、『外』が怖くて…



どうしても、動けない。



「すず。」

「…はい。」

「人生は長いんだ。
生き急ぐことなんてないんだよ。」

「…」



落ち込むあたしに
おばあちゃんは穏やかな口調で話す。



「気持ちに身体がついてこない時もある。
その逆もね。」



あたしの心の内を読み取って
優しく言葉を向けてくれる。



「そういう時は、休む時なんだ。
すずは、今、休んでいいんだよ。」



変わらず、笑顔で。




『焦らないで。』



……。



その笑顔に重なって、頭の中に響いた言葉に
ふっと、気持ちが軽くなる。


あたしは小さく口許を緩めて、頷いた。