きみはあたしのライラック

…。



勝手に視界がにじんで
目の前にいる、ひもろぎさんの顔が歪む。


慌てて、目を押さえるけど
込み上げてくる涙は止められない。



「すず。」



泣き出してしまったあたしを
ひもろぎさんは真顔で、優しく呼ぶ。


寄り添うように優しく呼ばれたら
もっと、だめだった。



「……あ、たし……」

「うん。」

「が、がんばり、たい…のに……怖く、て…」

「何が怖い？」

「…………他人(ひと)に
否定、されるのが……怖い」



震える声で、嗚咽を漏らしながら
自分の心の中にある、恐怖を打ち明ける。



『こんなことも出来ないなんて。』

『父さん達が、すずに厳しくするのは
全部、すずのためなんだよ。』

『あなたの将来のために言ってるの。』



ひとつでも、間違えてしまえば
与えられたレールから外れようとすれば
否定され、非難され、叱責される。

完璧じゃなければ
自分には価値がないと言われ、突き放される。



『うわ、こいつ。休憩時間まで勉強してるぜ。』

『いつも机にかじりついてるよね。』



完璧を貫こうと努力すれば
笑われ、馬鹿にされ、嫌われる。



『……趣味がガーデニングにお菓子作り？
なんか、すずってつまんないね。』

『見た目も性格も暗いし。』



素の自分で、ありのままに生きようとしても
貶され、蔑まれ、拒まれる。