きみはあたしのライラック

「じゃあ、りんさんは行かない?」

「……行くよ。」

「嫌なら無理しなくても…」

「嫌だけど、でも、お礼は言いたいから。」



りんさんは、再び起き上がると
真面目な顔であたしを見つめる。



「やまつみがいなかったら
すずとは会えなかったから。」

「…りんさん。」

「……まあ、やまつみのことは置いておくとして
…すず。」

「うん?」

「佐奈の手前、我慢してたけど
そろそろ甘えてもいい?」



急に、いたずらっ子のような笑顔を向けてきたと思えば

りんさんは、返事も待たずに
そのまま、ぎゅっと、あたしの体を抱き締めた。



「あれからずっと、会えてなかったから。
すずが恋しかった。」



あたしの肩に顔を乗せて
ほっとしたように表情を緩めるりんさん。



「……うん。あたしも。」



そっと、その顔に手を伸ばす。


驚きや気恥ずかしさを感じたのは一瞬で
久しぶりに直に感じるりんさんの体温と感触に
心が柔らかくほぐれていくのを感じた。


あたしも、ずっと
りんさんが恋しかったから。


手紙でやりとりをしていても
声を聞いたり、顔を見たり
こうして触れあうことが出来なかったから。



小さくこぼした言葉に
りんさんは嬉しそうに目を細めると
あたしの額に、軽いキスを落とした。



「……夢で会えれば良かったんだけど
もう僕には、その力はないから。」