きみはあたしのライラック

「あれ、りんさんは?」

「寝ちゃった。眠気が限界だったみたい。」



トイレから戻ってきた佐奈は
さっきまで部屋にいたはずのりんさんの姿がないことに気づいて、首を傾げた。



「ああ…申し訳なかったな。
長旅で疲れてたのに、随分話し込んじゃった。」

「そんなことないと思うよ。
りんさん、佐奈と会えるの楽しみにしてたから。」

「まさか、夢で励ましてくれた相手と
現実で会えるなんて思わなかったよ。」



あたしの隣に腰を下ろした佐奈は
くすくすと、おかしそうに笑った。



ずっと手紙でやりとりをしていた
りんさんから、「会いにいく」と連絡が来たのは
一週間くらい前のこと。


りんさんと直接会うのは、あの冬以来。
実に3ヶ月ぶりの再会だった。



「でも、ちゃんとお礼言えて良かった。
すずとりんさんのおかげで
私は、榊に会うことができたから。」

「それを言うなら、あたしだってそうだよ。
佐奈と榊さんがいなかったら
りんさんの所までたどり着けなかった。」



佐奈とあたしが、お互いに体験した
不思議な出来事について語り合ったのは
あたしがこっちに戻ってきて
数日後のことだった。


その後、りんさんからも
詳しい話を教えて貰った。


あたしと佐奈の出会いは
榊さんや、りんさんが意図したものではなくて
本当にただの偶然だったという。


そこから、自分達を含め
あんな風に物事が展開していくなんて
思いもしなかったと。


でも、その偶然と縁のおかけで
あたしも佐奈も、今、こうして笑えてる。