きみはあたしのライラック

自然と学校から足は遠のき、あたしは家に
自分の部屋に閉じ籠るようになった。


そこで、両親と揉めて。


不登校になったあたしを何とか復学させようと
両親は躍起になったけど、あたしはそれを頑なに拒否して。


争いはエスカレートした。


それを仲裁してくれたのが、おばあちゃんだ。



『通信制高校に入学する』事を条件に
当時、通っていた高校を辞めること
おばあちゃんの家に住むことを許された。


なんでもかんでも
自分達の思い通りにしようとする過干渉な両親から

嫌で嫌でたまらない人達がいるあの学校から
離れられた事に安堵した。


だけど、入り直した通信制の高校に通う気になれなかったあたしは、おばあちゃんの家でも相変わらず、部屋に引きこもっていた。




…………怖かった。




一度、ああいう目に遭ってしまったから。


ああいう人がいることを、知ってしまったから。


ああいう理不尽や
自分の無力さを知ってしまったから。



すべての人がそうじゃないことなんて解ってる。



人を貶(おとし)め、傷付ける人がいれば
人を癒して、救う人もいる。


だけど、あの時、あの瞬間
あたしには、救いがなかった。


そして、あたしも同じように
「救う」側になろうとしなかった。


痛みも、悲しみも、苦しみも、怒りも、辛さも
知っているのに、「傍観者」である事を選んだ。


自分が、これ以上傷付きたくなかったから。



……また、同じことを繰り返したら



今よりもっと、他人が、自分が嫌いになりそうで



全部全部許せなくなりそうで



怖かった。