きみはあたしのライラック

ふたりの会話が、どこか遠くに聞こえていた。


向けられた安堵の声や、喜びの表情を向けられても、すぐに反応を返せなかった。


ただただ、僕は
自分の身に起こったことが信じられなくて。


こんなに、唐突に

拍子抜けしてしまうくらいにあっさりと
解放されるなんて。


だって、今まで
どれだけ願っても終わりはやってこなかった。


願っても、祈っても
誰も、その声を聞いてくれる相手なんていなかった。


身の内に宿った力が定めた『寿命』が来るまで
生き続けるしかないんだって


この力と一緒に、僕は死ぬんだって


『化け物』として、生を終えるんだって


もう二度と、ただの人には戻れないんだって



奇跡なんて起こるはずないって、諦めていたのに。




なのに




力だけがなくなって、僕は、こうして生きている。




ただの、『人』として




ここにいる。




「…」




にじんで、歪む、手のひらに


小さく残る傷は、続く痛みは『人』である証。



「…りんさん。」

「…」



目の前で、嬉しそうに涙を流すきみを見て
ますます、涙が込み上げてくる。