きみはあたしのライラック

「ひもろぎが名前じゃないんですか?」

「ひもろぎは
よりましの別名みたいなものだよ。」



……りん、さん…



じっと、その寝顔を見つめて
心の中で反芻すれば


すぐ側で小さな笑い声。


そちらに顔を向ければ
鈴を転がすように笑っていたみなかみさまは
あたしを見て、面白そうに言う。



「『鈴(すず)』と『鈴(りん)』。
同じ字を持つ者同士、惹かれ合ったのかな。」

「……………なんの、話……?」

「おや、お目覚めかい?」



話し声で、目が覚めた様子のひもろぎさんが
寝ぼけ眼(まなこ)で、あたしとみなかみさまを見上げる。



「きみの名前が、彼女とお揃いだって話だよ。」

「……名前?
……すずの名前は、ひらがなの『すず』だよ。
みなかみさま…」

「細かいことはいいじゃないか。」

「みなかみさまは適当だなぁ…」

「ははは。じゃあ、僕はちょっと出掛けてくるから。朝ごはんまでには戻るよ。」

「うん。」



今度は普通にドアを開けて
みなかみさまは部屋から出ていった。