きみはあたしのライラック

「僕にとって、唯一無二の特別な人。」



頬を撫でる手つきは
とても、とても、優しくて


一心に注がれる視線には
あふれんばかりの愛情が込められていて


伝わる想いと熱に
じんわりと顔が熱くなる。


返す言葉が浮かばなくて
ただ、じっと、その顔を見つめていると


ふっと、目の前が暗くなって



「…夢の中だから、許してね。」



いたずらっ子のような笑顔を浮かべて
そう囁くと


その意味を問う前に


ひもろぎさんは
そのままあたしの唇を奪った。



「…」



すぐにあたしから離れたひもろぎさんは
放心しているあたしを見つめて
満足そうに口角を上げる。



…。



あたしは、そっと自分の唇に触れて



「!」



一瞬だけ、重なった唇の感触に、その熱に
時間差で火照る顔。


さっきとは比べ物にならない熱が
勢いよく全身に駆け巡り、耳まで熱くなる。



「…っ、~~~!」



何か言おうにも、何にも言葉が出てこなくて
声にならない悲鳴を出すことしかできなかった。


そんなあたしを
ひもろぎさんは変わらず、優しく微笑みながら
見つめるものだから


さらに、恥ずかしくなって


あたしは熱い顔を隠すように
ひもろぎさんの胸に顔を埋めた。



「やっぱり、すずはかわいいよ。」



恥ずかしさのあまり涙目になるあたしを
見おろして、ひもろぎさんは眉を下げて笑った。