きみはあたしのライラック

「…」

「!ひ、ひもろぎさ…っ…」



おもむろに立ち上がったひもろぎさんに
突然、抱き締められて、あたしはうろたえる。



「……そうだね。僕が、言ったことだ。」



そんはあたしを、ぎゅっと、力強く抱き締めて
ひもろぎさんは噛み締めるように呟いた。



「見るのは、浸るのは
過去や未来じゃなくて、『今』だって。」



ひもろぎさんは、それきり
何も言わずに、ただ、あたしを抱き締める。


されるがまま、固まっていたあたしだったけど


痛いくらいの抱擁に
ひもろぎさんの想いの強さを感じて


それほど、強く
自分が求められていることを実感して



「………すず。」



耳元で、涙声であたしを呼ぶ
この人の事が、愛しくてたまらなくて


行き場なく、宙に浮かせていた手を
その背中に回して
負けじと、その体を抱き締め返した。



「……会いに、来てくれて
……ありがとう。」

「…うん。」



優しく囁かれた感謝の言葉に
泣き笑いしながら、頷いた。