きみはあたしのライラック

『僕ね。すずと過ごす時間が好きだよ。』


『楽しいし、安らぐ。
それじゃ、だめかい?』


『すずと過ごす、『今』を
ちゃんと楽しめている。』


『僕は、『今』
充分満たされているんだけれど』


『それだけじゃ、だめかい?』



どうしようもできない運命(さだめ)だとしても
寂しさや、悲しみ、苦しさで
埋め尽くされる瞬間があっても

それでも、『今』
満たされていることも、幸せなことも
嘘じゃないんだと。


いつか、ひもろぎさんが
あたしに言ってくれた言葉。


気付いたひもろぎさんは、目を見開いた。



「……すず。」

「…ひもろぎさんから、言葉を貰う前
あたし、先の事、何度も何度も考えたよ。
それでも、出た答えは変わらなかったよ。」



これから、一緒にいることで


傷付けるかもしれない。

苦しませるかもしれない。


自分の事も、ひもろぎさんの事も。


考えていて、もう苦しくなった。

悲しくなった。


切なさで胸が張り裂けそうになった。


それでも


だから、ひもろぎさんとはもう会わないって
会うのは止めようって、結論にはならなかった。


どれだけ悩んでも、迷っても



「それでも、ひもろぎさんと一緒にいたい。」



たどり着く答えは、いつも同じ。



ひもろぎさんから、『離れる』なんて選択肢は
最初から、なかった。