きみはあたしのライラック

「……ひもろぎさんに、会いに来たの。」

「…」

「なんで、何も言わずにいなくなったの？」

「…」

「あたし、ひもろぎさんに
嫌われるようなことした？」



…
…
…



沈黙の後、ひもろぎさんは
顔を覆っていた手を退けて
うつむいたまま、静かに答えた。



「………すずは、なんにも悪くない。
僕の問題なんだ。」

「……なら、ちゃんと理由を教えてよ。
じゃないと、あたし納得できないよ。」

「…」

「ねぇ、ひもろぎさん。ちゃんと話してよ。」



ここに来てから、ずっと
ひもろぎさんと目が合わない。


一方通行な言葉ばかりで
全然、会話が成立しない。


頑(かたく)なに、あたしを見ようとしない
ひもろぎさんに


突き放すような、その態度に



こらえきれず、涙が浮かぶ。



「あ、あたし…
ひもろぎさんがいなくなってから
ずっと、寂しかったよ。」


「……悲しかったよ。」


「い、今だって、怒ってるんだよ…」



会えて、顔を見れて、こうして話せて


嬉しいけど


何も言わずに
いなくなったことがさみしくて


拒絶されたのが悲しくて


一方的なお別れをした
ひもろぎさんに怒っている。



胸の中では
たくさんの感情がせめぎあっていて


自分でも、制御できない。



「……ひもろぎさんが……大好きだから
ずっと、痛かったんだよ…」



涙と共に、こぼした『その言葉』に
ひもろぎさんの肩が揺れた。



「……っ、………知ってる。」



苦しそうに声を発した後


顔を上げたひもろぎさんは
声と同じく、苦悩に満ちた表情であたしを見た。