「………………すず?」
どこからか、響いたその声に
呼ばれた自分の名前に驚いて、顔を上げる。
涙で少し、ぼやけていたけど
少し離れた場所から
こちらをうかがう人の姿が確認できた。
呆然とその場に立ち尽くしたまま
あたしを見つめる
その人は…
「……ひも、ろぎさん…?」
「………………なんで、きみがここに……」
「ひもろぎさ……っ!」
駆け出したい気持ちとは裏腹に
少し動かしただけで、足に激痛が走って
顔をしかめる。
傷口を押さえて、痛みに耐えていると
遠くから落ち葉を踏む足音が段々と近づいてきて
「………怪我、したの?」
「……滑って。」
すぐそばまでやって来たひもろぎさんは
そのまま地面に片膝をつくと
あたしの足に視線を向けた。
タオルに にじむ血を見て
ひもろぎさんは険しい表情を浮かべる。
……やっぱり、ひもろぎさんだ。
色素の薄い瞳、ふわふわの癖っ毛、優しい声。
間近で見るその顔は、姿は
まごうことなき大人の男の人だけど
夢の中で見たひもろぎさんの面影が残ってる。
「…」
「……あの、ひもろぎさ…っわ!」
話しかけようとした瞬間、ふわりと体が宙に浮く。
「ひ、ひもろぎさん…?!」
「話は後で。先に手当てしよう。」
いきなり抱き上げられて目を丸くするあたしに
ひもろぎさんは冷静に言って、歩き出す。
「……どこに行くの?」
「僕の家。ここからなら
山を下りるより早いから。」
「………あたしが、行ってもいいの?」
「…ダメだ、なんて
言える状況じゃないでしょう?」
「……ありがとう。」
「…」
ひもろぎさんは、それ以上は何も言わず
あたしも、黙って、ひもろぎさんに身を預けた。
どこからか、響いたその声に
呼ばれた自分の名前に驚いて、顔を上げる。
涙で少し、ぼやけていたけど
少し離れた場所から
こちらをうかがう人の姿が確認できた。
呆然とその場に立ち尽くしたまま
あたしを見つめる
その人は…
「……ひも、ろぎさん…?」
「………………なんで、きみがここに……」
「ひもろぎさ……っ!」
駆け出したい気持ちとは裏腹に
少し動かしただけで、足に激痛が走って
顔をしかめる。
傷口を押さえて、痛みに耐えていると
遠くから落ち葉を踏む足音が段々と近づいてきて
「………怪我、したの?」
「……滑って。」
すぐそばまでやって来たひもろぎさんは
そのまま地面に片膝をつくと
あたしの足に視線を向けた。
タオルに にじむ血を見て
ひもろぎさんは険しい表情を浮かべる。
……やっぱり、ひもろぎさんだ。
色素の薄い瞳、ふわふわの癖っ毛、優しい声。
間近で見るその顔は、姿は
まごうことなき大人の男の人だけど
夢の中で見たひもろぎさんの面影が残ってる。
「…」
「……あの、ひもろぎさ…っわ!」
話しかけようとした瞬間、ふわりと体が宙に浮く。
「ひ、ひもろぎさん…?!」
「話は後で。先に手当てしよう。」
いきなり抱き上げられて目を丸くするあたしに
ひもろぎさんは冷静に言って、歩き出す。
「……どこに行くの?」
「僕の家。ここからなら
山を下りるより早いから。」
「………あたしが、行ってもいいの?」
「…ダメだ、なんて
言える状況じゃないでしょう?」
「……ありがとう。」
「…」
ひもろぎさんは、それ以上は何も言わず
あたしも、黙って、ひもろぎさんに身を預けた。


