きみはあたしのライラック

「じゃあ、オカミ様にお願いするといいよ!」

「…オカミ様?」

「この町を守ってくれてる神様だよ。
水神(すいじん)様とか、みなかみ様とか
龍神様とか、名前はいっぱいあるんだけど
ななの家はオカミ様って呼んでるの。」



ななちゃんの話す言葉の中に
耳馴染みのある名前が出てきて
あたしは、はっと息を飲む。



……みなかみさま。



この町を守っている神様だと言うなら
オカミ様はひもろぎさんの言う
みなかみさまで間違いない。



「オカミ様は、人が大好きで
よく山から下りて、町に遊びにきてるんだって。」


「だから、山のことも
町のこともよく知ってるから
きっと、お姉ちゃんの探している人
見つけてくれるよ。」



頭の片隅に浮かんだその存在に
気を取られていると
ななちゃんがあたしの手を掴んだ。



「お庭に祠があるの。連れてってあげる!」

「え、あ…っ、な、ななちゃん……!?」



返事も待たずに
ななちゃんはあたしの手を取り、駆け出す。


困惑しながらも
ななちゃんに連れられるがまま
あたしは庭園へと向かった。