きみはあたしのライラック

……あの宿の子だったんだ。



「そうなんだ。じゃあ、一緒に行こう?」

「うん。」



並んで歩きながら、宿を目指す。


どうやら、あたしに対しての警戒心は
すっかり解けたようで
女の子は、気さくに話しかけてきた。



「お姉ちゃん、探してる人、見つかった?」

「ううん。今日は見つけられなかった。」

「そうなの。残念だね。」

「うん。でも、明日も探すよ。
……かくれんぼ、負けない。」

「かくれんぼしてるの?
ななもね。隠れるの上手だよ!」

「ななちゃんって言うの?」

「うん。くらもと、なな。」

「あたしは、すずって言うの。よろしくね。」

「うんっ。よろしく、すずお姉ちゃん!」



隣で、「新しい友達ができた!」と
飛び跳ねて喜ぶ、ななちゃん。


純真無垢なその姿、その無邪気な笑顔は
誰かを彷彿とさせる。




……会いたいな。




ななちゃんに笑顔を返しながらも
頭に浮かんだその姿に
胸の中は切ない気持ちでいっぱいになった。