きみはあたしのライラック

「…」



『知っている』人の言葉は
本当に、いつだって心に深く刺さるものだ。



……おじいちゃん。



今、おばあちゃんの脳裏に浮かんでいるであろう人の姿が、あたしの頭の中にも浮かぶ。


強面で無口だったけど
おばあちゃんの前では、いつだって優しい表情を浮かべていた。


花が大好きなおばあちゃんのために
一生懸命勉強して、お金を貯めて
あの花屋を、おばあちゃんにプレゼントした。


10年も前に、病気で亡くなってしまったけど
おじいちゃんが残したものは、今もずっと
おばあちゃんの心を支えている。



『店のことも気にすることはないからね。
佐奈ちゃんも手伝ってくれていることだし。』

「…うん。ありがとう。」



あたしがいない間
佐奈が泊まりがけでおばあちゃんと
お店の様子を見てくれることになった。


怪我をして以来
おばあちゃんをひとりにすることが
少し不安だったけど、心強い友達の存在に救われる。



「また電話するね。佐奈にも、よろしくね。」

『伝えておくよ。』



約束をして、電話を切った。



……さて、と。



おばあちゃんへの連絡も済ませたし
荷物を片付けたら、さっそく
榊さんが教えてくれた山に行ってみよう。