「――では、ごゆっくり。」
部屋まで案内してくれた
宿の従業員さんに軽く会釈を返して
その足音が遠ざかっていくのを確認した後
あたしはすぐにおばあちゃんに電話をかけた。
『もしもし?』
「…あ、おばあちゃん?」
『すずかい?』
「うん。無事に着いたよ。」
『そうかい。滞在中も帰りも気をつけるんだよ。』
「うん。」
報告の電話に、おばあちゃんは
ほっとしたように声を緩ませた。
きちんと行き先や泊まる場所を
知らせているとは言え、遠距離の女ひとり旅。
おばあちゃんを心配させないように
ちゃんと定期連絡を入れる約束をしていた。
「……母さん達にバレたら
迷惑かけちゃうかもしれないけど、ごめんね。」
榊さんから
ひもろぎさんの情報を貰ったあの日。
家に戻ったあたしは
すぐにおばあちゃんに頭を下げに行った。
どうしても、会いたい人がいる。
だから、行かせて欲しい。と。
おばあちゃんは『行っておいで。』と
何て事のないように、笑顔で返してくれたけど
今現在、あたしはおばあちゃんの監視下に置かれることで、両親から、ある程度の自由を許して貰えている。
でも、その目が届かない場所で
ひとりで好き勝手やってるだなんて知れたら…
あたしはもとより
あたしの面倒を任されているおばあちゃんも
激しく責められてしまうだろう。
『いいさ。
すずは大事な人に会いに行ったんだろう?』
それでも、おばあちゃんは
変わらず、優しい口調で言葉を返してくれた。
『会えなくなってしまう前に
会える内に、会っていた方がいい。』
柔らかいけど、重みのある言葉が
切なさと愛しさの混じった声音で紡がれる。
部屋まで案内してくれた
宿の従業員さんに軽く会釈を返して
その足音が遠ざかっていくのを確認した後
あたしはすぐにおばあちゃんに電話をかけた。
『もしもし?』
「…あ、おばあちゃん?」
『すずかい?』
「うん。無事に着いたよ。」
『そうかい。滞在中も帰りも気をつけるんだよ。』
「うん。」
報告の電話に、おばあちゃんは
ほっとしたように声を緩ませた。
きちんと行き先や泊まる場所を
知らせているとは言え、遠距離の女ひとり旅。
おばあちゃんを心配させないように
ちゃんと定期連絡を入れる約束をしていた。
「……母さん達にバレたら
迷惑かけちゃうかもしれないけど、ごめんね。」
榊さんから
ひもろぎさんの情報を貰ったあの日。
家に戻ったあたしは
すぐにおばあちゃんに頭を下げに行った。
どうしても、会いたい人がいる。
だから、行かせて欲しい。と。
おばあちゃんは『行っておいで。』と
何て事のないように、笑顔で返してくれたけど
今現在、あたしはおばあちゃんの監視下に置かれることで、両親から、ある程度の自由を許して貰えている。
でも、その目が届かない場所で
ひとりで好き勝手やってるだなんて知れたら…
あたしはもとより
あたしの面倒を任されているおばあちゃんも
激しく責められてしまうだろう。
『いいさ。
すずは大事な人に会いに行ったんだろう?』
それでも、おばあちゃんは
変わらず、優しい口調で言葉を返してくれた。
『会えなくなってしまう前に
会える内に、会っていた方がいい。』
柔らかいけど、重みのある言葉が
切なさと愛しさの混じった声音で紡がれる。


