きみはあたしのライラック

「地図か、書くもの持ってるか?」

「えと…、地図アプリが。」

「本当に、随分と
便利な世の中になったもんだな。」



感心するような声をあげながら
榊さんは、物珍しげに
スマホを操作するあたしの手元を覗き込む。



「確か、地名は―…」



開いた地図アプリの画面を見せながら
あたしは、榊さんが口にした地名を打ち込む。


すると、画面には
いくつもの山々に囲まれた
山間の小さな町の情報が提示される。



「かなり昔の記憶だから
今は、場所を変えているかもしれない。
けど、この町を見守ることの
出来る範囲にはいるはずだ。」

「……ここが、みなかみさまの…」

「そうだ。あいつの神が護り続けている場所だ。」



「そして、ひもろぎの故郷でもある。」



榊さんは話しながら
画面に触れ、「ここだ」と
町を守るように囲っている山のひとつを指差した。



「だだっ広い山だから
探すのは一苦労だろうが
この山にいるのは、確かだろう。」

「ありがとうございます…っ」