きみはあたしのライラック

やってきたのは、おばあちゃんの家から
少し離れた場所にある図書館。


大きくて、古い書物や資料も置いてあるそこは
調べ物をするにはうってつけの場所。


検索スペースのパソコンの前に
腰を下ろしたあたしは、キーボードに指を滑らせる。



……手がかりは、『みなかみさま』。



人里離れた山の中で暮らしてるって
前に、ひもろぎさんは言っていた。


だけど


神様が存在するためには
『信仰心』が『人』が必要不可欠。


なら、きっと


離れてはいるかもしれないけど
どこかに、みなかみさまと縁のある土地が
人がいるはず。


そう思ったあたしは
山地で、昔から水神信仰のある場所を
片っ端から調べることにした。



『水神』『水の神』『山岳』『山』『山間の村』

『生け贄』『子供』『よりまし』

『水害』『飢饉』…



思い付く限りのキーワードを入れて
検索すれば



「……こんなに…」



かなりの数の検索結果が出てきて
その情報量の多さに目を回しそうになる。



「…」



……ひとつひとつ、見ていくしかない。



怯んだのは一瞬だけ。

すぐに持ち直したあたしは
そのまま閉館時間ギリギリまで、調べ物に没頭した。