きみはあたしのライラック

「…」



目覚めたあたしは、静かに上半身を起こし
そっと自分の頬を指先でなぞる。


ほんの一瞬の感覚が、熱が、まだ残ってる。



同時に、寂しそうな笑顔も。



「…」



……胸が、ざわざわする。



「……ひもろぎさん?」



呼び掛けたって
ひもろぎさんはここにはいない。



「…………ひもろぎさん。」



分かっているけど
胸の中に渦巻いた
この言い様のない不安をごまかすように


あたしは、また
ひもろぎさんの名前を呼んだ。