きみはあたしのライラック

「僕は、神様の『よりまし』。」

「よりまし?」

「依り代って言えば分かる?」

「神様が宿るもののこと?」

「そうそう。
一時的に神様が僕に宿って、神託をくだすの。」

「……ひもろぎさんは、実在してる人なの?」

「うん。普段はね
人里離れた山の中で、神様とふたりで暮らしてる。」

「………神様と……」

「うん。とても、優しい神様だよ。」



ひもろぎさんは
穏やかな笑顔で話してくれるけど


『神様とふたりで暮らしてる』なんて
どこか現実離れした
ファンタジーな内容の話に頭がついていかない。


いや、今のあたしのこの状況も
充分、ファンタジーではあるんだけど…


夢の中に毎回、同じ男の子が現れて
一緒にお茶してます。なんて


他人が聞けば、妄言。
空想上の出来事にしか過ぎないだろう。


実際にあたしも

これは
あたしが作り出した都合の良い夢なんだって

たまたま、ずっと同じ夢を視続けてるんだって
感じてる部分がある。



「もとはただの人間だったんだけど
神様に憑かれる内に、僕の中に変な力が宿ったみたいでね。」


「気付いたら、こんな風に
色々、不思議な事が出来るようになったんだ。」



ぱちんと、ひもろぎさんが指を鳴らせば
周囲の景色が、一瞬にして変化する。


あたり一面が、満点の星空。


まるで、プラネタリウムの中にいるみたいに
きらきらと輝く星々に包まれる。