きみはあたしのライラック

「……ただ、ひもろぎさんが元気ないのは嫌だから、して欲しいこととか、食べたいものあったら教えて。何でもするし、作るから。」

「……何でも?」

「うん。」

「…。……じゃあ、抱き締めてくれる?」



目を伏せて
少し、ためらうような間を置いてから

おずおずと、窺うような上目遣いで
ひもろぎさんは、あたしに小さく問いかける。


思いがけないお願いに、内心少し驚きながらも



「いいよ。」



その小さな身体を引き寄せれば
どこか不安そうだったひもろぎさんは
あたしの体温に、ほっとしたように表情を緩める。



「……頭も、撫でて欲しい……」

「うん。」



しばらくそのまま
ひもろぎさんを抱き締めて
無言で頭を撫で続けていると


不意にひもろぎさんがあたしを呼ぶ。



「……ねぇ、すず。」

「うん?」

「少しは、生きやすくなった?」



唐突な問いかけに、目を瞬かせる。


どうして今、そんな事を聞くのだろうと
思いながらも


真面目な顔で、確かめるように聞いてくる
ひもろぎさんに、あたしは素直に答えた。



「うん。」

「……そっか。」

「未来に対して
前向きに考えられるようになったのも
ひもろぎさんのおかげだよ。ありがとう。」