きみはあたしのライラック

「すずに甘やかして貰えるのは好きだけど…
言葉を疑われるのは好きじゃない。」

「う、疑っては…」

「疑ってる。
僕はすずを本気で可愛いって思っているのに。」

「…っ」



……その姿で、そういうこと言うのは禁止って
前に言ったのに…



見た目の影響力は、やっぱり大きくて
一気に顔が熱くなる。


幼いひもろぎさんから向けられる『可愛い』と
同い年のひもろぎさんから向けられる『可愛い』とでは、感じるものが違う。


さっきは、微笑ましい気持ちで
受け取れた言葉なのに


今は…


その言葉に過剰に反応してしまう。



………本当に困る。



勘ぐってしまいそうになるから。


自意識過剰だって、解ってるのに
そんなこと、あるはずもないのに
特別な言葉を向けられているかのように思えて


顔だけじゃなく、全身に熱が広がって
心臓の鼓動が速く、大きく耳に響く。



「自信がつくまで何度でもとは言ったけど
まだ言い足りない?」



ひもろぎさんは、綺麗なその顔を
ずいっとあたしに近付けて
言い聞かせるように、言葉を放つ。



「すずは可愛いの。
だから、ちゃんと周りを警戒しなきゃダメだよ。」

「け、警戒って…そんな…」



複雑なあたしの気持ちなんてお構いなしに
再び、『可愛い』を口にするひもろぎさん。


その言葉と、その距離にうろたえて
どぎまぎするあたしに
ひもろぎさんは真剣な顔で言葉を続ける。