春よ、瞬け。


「え!いいよぉ、冴くんだってただでさえ毎日忙しくて疲れてるでしょ?!」

わたしがそう言うと、冴くんは「月麦は後輩の中村のフォローをしてただろ?だから、上司の俺が月麦の仕事を手伝うのだって有りじゃないか?」と言った。

冴くん、、、陰では"鬼上司"って言われてるけど、やっぱり冴くんはわたしの知っている優しい冴くんだ。

「じゃあ、お言葉に甘えて、、、ステーショナリーの方で新作のフリ◯ションとモフサ◯ドの文具を納品する店舗を決めたんで、その連絡用の書類を作成してもらえませんか?データは共有フォルダに入ってます。」
「了解。」

そして、わたしたちの残業は始まった。

お互いに会話もなく業務に集中し、気付けば20時。

「終わったー!」

そう言って両手を上に伸ばすわたしに、冴くんは「ご苦労さん。」と言った。

「ありがとう!冴くんのおかげでだいぶ仕事量が減ったよ!」
「月麦は担当部門が多過ぎだからな。これは通常なら一人で担当する量じゃないよ。」
「でも、わたしこの仕事好きなんだぁ!だから頑張れる!」

わたしがそう言うと、冴くんは微かに口角を上げ、「それじゃあ、帰るぞ。」と中村くんのデスクから立ち上がった。

「月麦、このあと用事あるか?」
「え?無いけど。」
「じゃあ、うちに来い。飯作ってやる。どうせ、このまま帰ったら風呂入って寝るだけにするつもりだったんだろ?」
「な、何で分かったの、、、。」
「本当にある意味、手の掛かる部下だなぁ。ほら、行くぞ。」

そう言って、さっさと帰ろうとする冴くん。

わたしは「あ、ちょっと待って!」と慌ててバッグを持ち、冴くんのあとをついて行った。