春よ、瞬け。


そして次の日。
朝から二人して寝不足で出勤をした。

すると、冴くんが寝不足からの欠伸をしているところを廊下で滝さんに見られてしまい、「東郷が欠伸なんて珍しいなぁ。もしかして、、、昨日は夜遅くまで風早さんとお楽しみしてたのか?」と茶化されていた。

「はぁ?うるせーよ。」
「否定しないってことは、そうなのか!いいなぁ〜!」
「滝。お前、その口塞げ。」

茶化されて照れている冴くんは可愛くて、そんな二人の会話を聞きながら、わたしはクスッと笑った。



それから、わたしたちは二年の交際を経て桜が満開の春に結婚し、わたしは東郷月麦になった。

わたしたちは同じ商品部なのだが、夫婦で同じ商品部に在籍しているわけにもいかず、わたしが総務に異動する話が出たのだが、冴くんが「妻は、商品部に必要な存在です。俺が総務に異動します。」と言い、冴くんが総務主任となり、その代わり総務主任だった粟原主任が商品部へと異動してきた。

冴くんが総務へ行き、深見さんと渋谷さんは「鬼が居なくなった!」と喜んでいたのだが、商品部の業務をまだ把握しきれていない粟原主任は"仕事をしない"で有名な主任で、今まで深見さんと渋谷さんのフォローをしてきてくれた冴くんが居なくなった分、深見さんと渋谷さんはまともにこなせていなかった業務を自分たちで処理しなくてはいけなくなり、残業の日々が始まったのだった。

そんな二人は、今更、冴くんが主任で居てくれた有難みを感じていることだろう。

そして、部署が変わり、事務所も変わってしまった為、社内であまり関わることがなくなったわたしたちだが、たまに廊下で会うと冴くんは資料保管庫の方を親指で指し、密かに資料保管庫で会ったりしていた。

「最近はどうだ?」
「こっちは問題ないよ。ただ、深見さんと渋谷さんが大変そう。」
「今まで俺に甘えてきたツケが今きてるんだな。」
「冴くんは?総務はどう?」
「まぁ、何とかやってるよ。」
「総務って、若い女の人ばかりだよね?」
「何?心配してんの?」

そう言って、悪戯な微笑みを浮かべる冴くん。

「大丈夫だよ。俺には、月麦しか見えてないから。」

冴くんはそう言うと、わたしにキスをする。

こんなところで、ダメだと分かっていても受け入れてしまうわたし。

「あー、ダメだ。ヤバい、これ以上したら止まらんなくなる。」

冴くんはそう呟くと、わたしの耳元で「続きは帰ってからな。」と囁いた。

その夜は言うまでもなく、その"続き"が始まり、わたしは冴くんの愛で満たされた。

そして冴くんは寝る前にわたしを抱き締めながら、こう囁いた。

「月麦、、、何かあったらすぐ俺に言えよ?いつでも"さくら"弾いてやるから。」



―END―